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2010年01月12日

旅情



じゅんじゅんです

同じヘップバーンでも、オードリーにくらべキャサリンの魅力と言うのは、

硬質で解りにくいのかもしれない。

しかもこの映画のキャサリン・ヘップバーンは、中年の有能な秘書で、その

髪型や服のラインよりも、うでに浮き出るしみそばかすが物語る方に実際の

年齢が出ている。(設定は38歳と言う説があるらしいが、キャサリン・

ヘップバーンの当時の年齢40代後半の等身大で演じていて、故に現在の

感覚で言うところの、典型的なオールド・ミスをも体現出来ているのだ。

38歳で未婚であっても、現代女性なら「夢」を持っていて当たり前なのだ。

やはり実年齢の40代後半の設定で観る方が、彼女のかたくなさや孤独を

より深く理解できるであろう。)

そんな彼女の「ふくらはぎ」に見とれる、というより、その足首に浮き出る

そばかすで値踏みするように、彼女を見ている男、明らかに夏の暑さと退屈さ

に飽いている様子だ。

そう。この映画の原題は「サマータイム」

さすがだと思わせるのは、キャサリン・ヘップバーンの小物使い。

夏だというのに?いや、夏だからこそのおしゃれか、手袋をかかさない。

そして後ろベルトのサンダル。結いあげた髪に細いリボン。

ウエストが細いので、ワンピースドレスのラインが実にきれい。

そして胸は無いが、イタリアの中年男は、彼女の足くびとふくらはぎに

やられるのである。

この映画のラストシーンで、中年男ロッサノ・ブラッティがプレゼントを

もって走ってくるが、渡すことができず、最後に、くちなしの花を彼女に

向かって見せるのだが、その意味が長い間わからなかった。

しかしノーカット番をみて、やっとわかったのだ。

夜のカフェで花売りのおばあさん(娘じゃないところがいい演出)から

「好きな花を選らんで」と買ってあげる花だったのね。その花は、彼女が

はしゃいで運河に落としてしまい。。。

若いころの私は、あのプレゼントの中身はなんだろうと思っていたのだが、

年を取った私は、オールドミスではないが、しかし、クチナシの花の意味は、

十二分にわかるのだ。

「ずっと愛し続ける」「いま別れればね」賢いですキャサリン・ヘップバーン。

この映画のセリフの訳は、日本におけるイタメシブームのはるか昔になされた

ので、長い間、ロッサノ・ブラッティの台詞は「腹がすいてる時は、ステーキ

しか食べないとか言わず、スパゲッティを出されたらスパゲッティを食べ

なさい」などと訳されていた。

「飢えてもいいわ」という返事に「う~ん。ステーキが出てくるまで待ち

たいよね」と若い私はうなずいていたものだが、馬鹿でした。

今回、台詞を良く聞くと、また新しい訳でも、「お腹がすいている時、

ラビオリが出されたら、食べなさい。ステーキでなきゃ食べないなどと言わ

ずに。」でした。返事は「飢えてもいいわ」で同じでしたが。。。

即座に「うそだ」と全否定されてましたね。

ロマンスを求めているなら、若くてリッチで独身の男とのロマンスを望んで

いても、それは無理だと。

旅情の情は、情事にかけられているのかもしれないが、短い夏のロマンス

として成立するギリギリのところで、キャサリン・ヘップバーンはアメリカ

に帰るのです。

彼女のアメリカでの日常は再び「有能な秘書」でしょう。

物売りのはだしの少年との友情も、再びベニスを訪れるという約束も、その

場かぎりのものとなるのでしょう。

彼女が「おおきなセニョール」と一緒に、センチメンタルジャーニーに出る

ことはないでしょう。

バーボンを飲みながら、8ミリで撮影したベニスの風景を見ることがある

でしょうか。あのひとつだけのベネチアングラスでワインを飲むのでしょう

か。

「旅情」には、引退記念旅行の初老の夫婦と、中年男とその若い妻、という

二組の夫婦が出てくる。中年男は若い妻を昼間は束縛するか一人で遊ばせて

おくか、気ままかってにやっているが、夜は宿の女主人と情事を持ったりす

る。若い妻は「自分は夫のすべてでありたい」と言って泣くのだが、

キャサリン・ヘップバーンはそれを「あなたのは愚痴じゃなくてのろけよ」

とはね付けるのだ。

中年男はもう4年も個展を開いていない画家らしい。その苦悩は若い妻では

満たされないのはよくわかる。

ロッサノ・ブラッティも妻とは別居しているとか言っている。カトリックの

国で離婚が許されない時期が長かった国だ。彼は子供もいるし、ロマンスも

夫婦生活も両方の経験があるが、キャサリン・ヘップバーン扮するジェーン

は違う。

オールドミスになっても、「恋に恋する乙女」度は半端でなく高かったのだ。

若い妻が「わたしはあなたのような知的なタイプがすき」という。

ジェーンと宿の女主人は同年輩かとおもわれるが、「知的なタイプ」という

より「勝気な女」である女主人は、よく「私は勝気よ」と自己宣伝するただ

の負けず嫌いな小娘とは違って、小股の切れ上がったいい女、もうときめき

は無いが情人はいて、つまみぐいもするという「未亡人」(ええ、自由気楽です

よね。経済的にも自立してるし)私が男でも、3人の中で情人にするなら

おかみですよ。

だから、もしかして、おかみとロッサノ・ブラッティ扮するレナートは

すでにわけありか、昔わけありかも知れないな、などと思います。

それとも、商売人同士、旅の途中のひととの情事はもっても、避けるのかも

しれませんね御近所さんは。秘すれば花、ばれたら醜悪ですもの情事なんて。

いえ、単なるしったかぶりですけど。

年を取ると経験しなくても推察できることがあるんですね。

ジェーンは「わたしは自立している」とおかみにたいして豪語していたけれど、

寂しいからときめかない情人と、つまみぐいの他人の夫をもっているおかみ

の方が、真に自立していると思いましたよ。

ジェーンは、もう強がりは言わないのではないでしょうか。

「ひとりはさびしいわ」と言える、真に自立した女になれたのじゃないで

しょうかね。



  


Posted by massan&junjun at 17:41Comments(0)